【ピロリ菌がいると、胃がんになるリスクが増す】
「ピロリ菌」という言葉をお聞きになられた方も多いと思います。
ピロリ菌は通常幼少期より胃に住んで、炎症を起こします。
炎症が続くと、若いころは胃の粘膜がむくんだり、潰瘍(口内炎のような粘膜障害)を起こし胃痛の原因となります。
さらに年数を経ると次第に胃の粘膜がやせ(萎縮)て、胃がんが発生しやすくなります。
胃がんにかかった人の99%はピロリ菌陽性なのです。
他にもポリープやリンパ腫やじんましん等の要因になることもあります。
【ピロリ菌の調べかた】
ピロリ菌は肉眼では見えませんが検査方法がいくつかありますが、一長一短あります。
患者さまに合った検査方法の選択が重要です。
ピロリ菌の検査は、通常胃カメラと併用しないと保険適用になりません。
自費でピロリ抗体(血液)検査を受けることもでき、費用は3300円(税込)です。
ピロリ菌を調べる主な方法は以下の通りです。
- 胃カメラで粘膜(胃の内側)を見ると95%以上の確率でわかります。
- 胃カメラで採取した胃の粘膜を顕微鏡で見て、菌がいるかどうかを調べる方法は直接ピロリ菌を見つける検査方法です。点で調べる検査であり、粘膜を採取したピンポイントに菌がいなければ見つからないのが弱点です。
- 血液検査で抗体を調べる方法は簡便ですが、菌を直接測定することができません。間接的な検査であり、数値の判定には注意を要します。
- 便で抗原を調べる方法は痛みがなく精度が高いです。
- 尿素呼気検査も痛みがなく精度が高いです。通常除菌治療後の成否判定に用います。
【ピロリ菌の除菌療法】
ピロリ菌の除菌は、複数の抗生物質を1週間内服する治療です。
近々で胃カメラを受けていること、ピロリ菌がいることが証明されていることが、除菌治療保険適用の要件です。
胃がんがないことを証明することが主目的で、胃がんがある場合は除菌よりも胃がんの治療が優先されるからです。
対象疾患は以下の通りです。
- ヘリコバクター・ピロリ胃炎
- 早期胃がん内視鏡治療後
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
- 胃MALTリンパ腫
- 特発性血小板減少性紫斑病
一次除菌用のボノサップ、二次除菌用のボノピオンです。
一次除菌、二次除菌の成功率はそれぞれ約88%、約95%です。
一次除菌薬の内容は胃酸を抑えるタケキャブ、抗生剤であるアモリン、クラリスです。
二次除菌薬の内容はタケキャブ、アモリンが一次と共通でそれにフラジールという抗生剤が加わります。
【除菌治療の副作用】
もっとも深刻なものはじんましんなど、アレルギーによるものです。
じんましんは内服開始後2~3日で発生する場合もあれば、除菌が終わって2~3日経って出現することもあります。
じんましんが出現した場合はすぐに中止し、ご相談ください。
程度に応じ、注射や内服薬で対応させていただきます。
また、便がゆるくなることもしばしばみられます。
通常は整腸剤で対応可能なレベルで、除菌薬を処方時にビオスリーという整腸剤を一緒に処方しております。
そのほか
- 口が苦く感じる味覚異常
- 二次除菌薬に含まれるメトロニダゾール(フラジール)とアルコールの飲み合わせ不良による気分不良
- 血便 など
【除菌治療前後を画像で比較】
ピロリ菌陽性の方にみられる過形成性ポリープは、ピロリ菌除菌療法のみで消失することも期待できます。昔なら入院して切除するしかありませんでした。
【除菌に成功したら】
年一回程度、定期的な胃カメラフォローを行ってください。
除菌に成功すると、胃潰瘍や十二指腸の再発率がかなり落ちます。しかし、胃がんになる確率は急にゼロにはなりません。
それまでにピロリ菌によって引き起こされた変化が修復されるのには時間を要するからです。
除菌後1年以内、もしくは数年してから胃がんが見つかった事例もございます。
除菌後も定期的に胃の中を調べるようにしましょう。
【除菌に成功したはずなのに健康診断で陽性と指摘された】
ピロリ菌の除菌をして、きちんと除菌成功を確認したはずなのに、翌年の健康診断で陽性・再検査と言われた、というケースは少なくありません。
詳しく知りたい方は院長ブログに記しましたので、こちらをご覧ください。
【除菌に成功したのに調子が良くない】
一方で、ピロリ菌除菌に成功すると、胃酸の分泌が本来の状態に回復する、つまり酸が多くなるために、胃痛や胸やけが出現する場合があります。
逆流性食道炎の症状が強い場合は酸を抑えるお薬を用います。
そのほか、ストレスや疲れ、寝不足などがあると胃酸の刺激に弱くなったり、胃の緊張が強くなって食べてもすぐに満腹に感じる、胃の張りがつらい、といった症状が出やすくなります。
【結局除菌するべきなのか】
若い世代の方ほど除菌の恩恵が大きいです。若い方はできるだけ除菌を行うことをお勧めします。
一方で、ご高齢の方は除菌を行っても粘膜の修復が進まないこともあり、除菌のメリットが少ない傾向にあります。
患者さまに合ったご提案をさせて頂きますので、詳しくは医師にご相談ください。
【自分の子供にピロリ菌がいるか調べたい、除菌治療は?】
先述のように、ピロリ菌の除菌には複数の抗生物質を服用しないといけないこと、胃カメラを先行して行わなければならないことなどがありますので、少なくとも成人されて以降にお調べすることを推奨しております。